キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
5-2
「志室さん。領収証の金額、一桁間違ってるよ」

頼まれて打ち込んだ手数料の領収証を渡すなり、羽鳥さんが表情を曇らせる。

「あっ、すみません・・・っ!」

差し戻されて慌てて確認すると、本当にゼロが一つ多かった。
印紙の消印をまだ押してないから作り直しは出来るものの、こんな迂闊なミスは許されない。

「すぐ切り直します」

「ん。急いで」

出かける時間が迫っていたのか、いつもより厳しい顔付きで見返された。
頭を下げ、今度は間違えないよう慎重にチェックライターを操作する。

羽鳥さんにもう一度しっかりとお詫びを言い、鞄を手に外出を告げた背中に「行ってらっしゃいませ」と吉井さんと二人で声を掛けた。
これがもし他の営業さんだったら、何やってんだって、声を荒らげられてたと思う。それをしない羽鳥さんすら苛立たせた自分が、すごく情けない。
泣きそうになってるのを必死に堪えて、計算書を作成する為にパソコンに向かった。
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