キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
広がる河川敷の上に渡された長い橋に差し掛かって、ここからの眺めが気に入りだとミチルさんが教えてくれる。

夜空と大地の境も無くなった一面の闇。見渡す彼方に、赤や緑が雑ざった光の帯が横たわり、空気が澄んでるからか、高層ビルの摩天楼が鮮明に浮かび上がって見えた。
光りの帯の正体は大きな幹線道路で、車のヘッドライトや沿って並ぶ電飾の数々が、遠くからだと煌めく一筆書きの線のように見えるんだろう。

「展望台じゃなくても、綺麗な夜景って見えるんだねー」

窓越しに、感嘆しながら見入ってると。

「りっちゃん」

ミチルさんに呼ばれて振り返る。
ハンドルを握り、フロントガラスの向こうに視線を向けたまま、彼が続けた。

「結婚しよう」






音が聴こえた。
ゼリーになった心臓が、グニャリと潰れた音が。
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