キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「そう言えば利律子ちゃん、最近なにかあった?」

カップの中のラテをぼんやり見つめてたら、優しい声がして。隣りを振り向くと、睦月さんが淡い微笑みを浮かべてた。

「いえ・・・。何もないです、よ」

さり気なく笑い返したけど、真っ直ぐな彼女の眸は、全部を見透かしてるようにも見えた。

「気のせいだったらごめんなさい。社長と会ったバレンタインの後から、ちょっと様子が違う気がしてたの。・・・それにも増してね、最近は顔色も悪いし、普段はしないミスもしてたでしょう? 大介さんも心配してたから」

労わるように。包み込むように。それが単なるお節介や好奇心じゃないのは分かってた。心から心配してくれてるんだって。

だけど。これはミチルさんと、あたしのことで。誰かにどうにかしてもらえるものじゃない。
ぐっと自分を堪えて、申し訳なさそうな笑顔を取り繕いながら、テーブルの上にカップを戻す。

「すみません、迷惑かけちゃって。夜更かしの癖、直さないとダメですね」

・・・ミチルさんに眠らせてもらえない。半分は嘘じゃない。

「羽鳥さんにも寝不足のせいであんなミスしちゃったし、うっかりしないよう気を付けます」

真面目な笑みで、ぺこりと頭を下げ。うっかりと寝不足を言い訳にして、やり過ごそうと思った。あたしを思い遣ってくれる彼女をさえ誤魔化して。

だって。
そうしないと。

あたしは。
今にも崩れて跡形もなくなる。

自分を保つのに必死で。これ以上は。オネガイ、ダレモ、フレナイデ。

潰れて、ひしゃげたままのココロが微かに悲鳴を上げてた。
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