12月の春、白い桜が降る。
___次の日、彼女の記憶から僕は消え失せたそうだ。

昨日のことも、今までのことも、僕の存在自体も。

そしてもちろん、もう会いに来ないで欲しいと。

ひなたの事は忘れて欲しいと。

だが、そこまで絶望という絶望は襲ってこなかった。

もともと、昨日のデートは最後の希望のつもりだった。

でも、記憶が何もかも消え失せて言ってしまうと言っていたひなたは、
僕のことを覚えててくれていた。

それだけで僕は十分だ。

僕のことを覚えていようと、忘れないでいようとしてくれた。

そのひなたの気持ちだけで、十分だ。
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