12月の春、白い桜が降る。
それから私は、冬が好きだ。

他のどの季節よりもロマンチックだし、なぜかとても切ない気持ちになる。

特に嫌なことがあったわけでもなければ、

失恋したとか、片想いしてる、とか、そんなことは一切考えないとしても、

口を開く度に出る白い息とか、取れそうになる耳も、かじかんで真っ赤になる指先も、

澄んだ空気も、全てが、切なくて、美しい。

本当は、今までだったら冬が一番好きな季節だった。

ように告白される、あの日までは。
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