12月の春、白い桜が降る。
しかしその後の両親が姉に対する態度で、現実なんだと思い知らされる。

僕は元気で、これから先あと何十年もこの世界を生きることが出来る。

姉にはそれが、ただ“出来ないだけ”。

その“出来ないだけ”がどれほど重みのあることか。


例えば、姉は僕より足が速いわけでもないし、僕よりサッカーができる訳でもない。

逆に言えば、僕は姉より歌が上手いわけじゃないし、あんなに心から笑うことも出来ない。

お互いに出来ないことなんて山ほどあるけど、どうしてだか、これだけはあまりにも重みが違いすぎる。

そのただ姉が僕より何十年も長く生きられないだけで、両親は姉に心底優しくした。

それは僕も同じで、同情とか、悲痛とかで極度に優しくしていた。

姉はいつも通りありがとう、とだけ言っていた。

同情扱いするな、とか、ごめんね、とか、そういうことは一切なく、
いつも同じ、笑って、そう言っていた。
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