12月の春、白い桜が降る。

結川 春斗

姉の、こんな姿は見たくなかった。


幼い頃から姉は勇敢で、自分が四歳の頃、
姉が周りの友達より体の小さかった僕をいじめっ子から何度も何度も助けてくれていた。

姉は怖いもの知らずで、前向きで明るくて、毎日を幸せそうに生きている人だった。

僕もそんな姉が好きで、そんな姉が誇りで、だから彼女の病気を知った日は、酷く失望した。

でも彼女は、自分が病気だと知ってもいつも通り明るかった。

僕はみんなに騙されているのだろうか。

こんなに明るくて元気な姉が本当にあと二年で死んでしまうのだろうか。

僕にはとても信じ難い話で、現実味を感じられなくて、あまり深く考えていなかった。
< 172 / 210 >

この作品をシェア

pagetop