やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
「ま、町田さん?なんでここに?」
岡先輩は、いきなり現れた町田課長をみて、かなり動揺してる。

「いいから、ここを出るぞ。タクシー待たせてある」
「ええっ?」今からですか、と課長を見上げて寝ぼけた顔で答える岡先輩。
先輩は、町田課長の背後に私を見つけて、事情がわかったみたいだった。
私と課長の顔を交互に見て驚いていた。
「ごめん。迷惑かけたみたいだな」上着を手渡した私に謝ってくれた。
「いくぞ」準備が整うと、町田課長が素気なく言った。
課長は、力強く岡先輩を支えると、ぐいっと力を入れて岡先輩の体を引き上げた。
結構な力だ。
本当に男らしくて格好いい。

「あの……」私は、自分のコートを持って町田課長の後についていこうとした。
「岡の荷物を、下に待たせてるタクシーまで持ってやってくれ」
「はい」

そ課長、それだけですか?
「なんだ?」
「あの……無理に移動しなくても、気分が悪くて寝てるんだし、このままでも」
課長が私の顔を睨みつけた。
そして、沈黙。
機嫌がさらに悪化する。

「このままでも?どういう意味だ?
君は、このまま、この男といた方がよかったのか?」
あまりの剣幕に岡先輩が課長から離れた。
「そう言う意味で言ったんじゃないわ。私は、ただ……」
「親切からそう言った」
「ええ……」
町田課長は、岡先輩に靴を履かせやすいように、玄関に座らせた。
そうして、怒っているというよりやりきれないという表情で私を見た。
「そうしたいなら、勝手にしろ」

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