やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~
時間を置かずに、ドアをノックする音が聞こえてきた。
ええっ?もう着たの?

私は、彼への気持ちが押さえきれず、課長会いたさに玄関まで駆け寄る。
ほとんど彼に飛び込むように抱きついた。
どんな時だって、顔を見られるのは嬉しい。

怒っていませんように。
私は、祈るような気持ちで、課長の顔を見つめる。
彼は、無表情に私を見ていた。
何も感じてないみたいに、冷たい表情だった。
課長は、抱きつかれても表情をゆるめない。
「どうした都。外はとても寒かったよ。いつものように中に入れてくれないのか?」
「ええ、いいわ」
キスをしようとして近づいたけど。軽くかわされた。

よい兆候ではない。
町田課長は、決して表情には表さないけど。
相当怒ってると思われる。話を聞いてくれればいいけど。
それも難しそうだ。彼は、私とは目も合わさず、部屋の奥の方を見つめている。

「岡は?どこだ」彼に言われて、ベッドの方を見た。
私は、バカだ。玄関にキッチリ揃えて岡先輩の靴が置かれている。

課長は、部屋のなかをずかずかと横切ると、ベッドの上の布団を一気にはぎ取った。
身体を丸めて寝ていた岡先輩の肩をつかんだ。
「岡、起きろ」きつい声だった。岡先輩が驚いて目を覚ました。
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