やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

先輩、具合大丈夫ですか?
私は、身体を起こして先輩の顔が見えるところまで近づいていく。
あれだけ酔ってたのに。
コンタクトレンズは、しっかり外していた。近眼の私は、近づいて見ないとはっきり見えない。

あれ?
指先が岡先輩のあごに当った。
どこもすべすべしてたはず。
ひげは、ほとんど伸びてないはずだ。
ん?
何これ。あごの辺りががチクチクする。
1日で、ひげが急に生えて来たんですか?
私は、ひげが生えた岡先輩も好きです。
たとえ身体中毛むくじゃらでも、私は構いませんよ、先輩。

でも、まさか……
本当にひげが生えて来たの?
そんなことありませんよね。先輩。

えっと……

顔をあげて、昨日みたいにキスをしようとしたら、寝ていた相手と目が合った。

ん…… この人誰?
誰じゃないって。

ええっ?

どういうこと?誰か説明して。

岡先輩じゃない。
この人は、岡先輩じゃない。
うそ……
頭が真っ白になった。

先輩とは、まるで別人。
しかも、
相手は、私がよく知ってる人物。

「課長、ここで何してるんですか?」

昨日から、私を抱きかかえるようにして寝ていたのは、岡先輩ではなかった。
私の直属の上司、町田課長だった。

「お前こそ何してる。起き上がると寒い。
早くこっちに来い」
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