やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~


「まあ、飲んで」作田君が岡先輩に、ビールの大ジョッキをすすめている。
岡先輩は、すでに酔いがまわって、顔が赤い。
「大丈夫ですか?」私は、作田君に睨みをきかせたまま、隣の岡先輩に話しかける。
「ん、なんとかね。生きてるよ」
言葉とは、裏腹にぐらんと体が揺れて、私の肩に寄りかかった。
「良かったじゃん」作田君が顔を近づけて来て小さな声でいった。
「良かったって、何よ」私は、作田君の体を押しのける。
こんなに飲ませて、岡先輩酔わせるなんて。
「しっかり捕まえとけよ」
作田君はそう言い残すと、人に呼ばれてどこかに行ってしまった。

岡先輩は、私の肩か部屋の壁なのかもわからない状態で、私にもたれかかっている。思ったより人数が集まった。水口さんのチームだけじゃない。他のチームの男の子たちもいる。顔も知らない営業の社員が何人も話しかけて来た。
そのかわり、女性は私と水口さんだけだ。これほど徹底しているのは、かえって清々しいと思う。感心してる場合じゃないか。

< 97 / 159 >

この作品をシェア

pagetop