私達の初恋には秘密がある
久しぶり
強く風が吹く日だった。

北風に煽られて、首元のマフラーを掴んだ。

こんなことなら手袋でもしてくればよかったと私は後悔した。


「はぁ...」


手が凍りそうなほど、冷たくなったとき。


君が現れた。


今もあの時のことはよく覚えてる。

君は急いでた。

私は空を見ていて、真っ直ぐ走ってくる君に気づきもしなかった。

今思えば、君が私に突っ込んできてくれたおかげだな。

なんてそんなことを思うんだ。

よそ見ばかりしていた私に、こっち見ろよとでも言うように。





ドンッ────。


不意に肩に衝撃が走っる。

そのせいで、体が後ろへ傾いた、


「あっ...」



転ぶ!



ぎゅっと目をつぶった。





でも、数秒経っても私の体はなんともなかった。



...あれ.....?




「...あ、あっぶなかった~」


ふぅー。と息をつく私にぶつかってきた人。


うわっ。近い...



その近さに、顔を上げられなかった。


腰...


腰?

腰に何か感覚があると思ったら、ぶつかった彼が私を支えてくれていた。


その場で少し足踏みしていた、その人はすみませんと頭を下げた。


慌ただしい人。

そんな第一印象。



「いやっ、大丈夫です。それに、転ばないようにして貰って...ありがとうございます」

俯いていた顔を上げると、

不意に目が合った。


そして、私達の時間は止まった。


「「えっ...」」


ほんの数秒だったのかもしれない。

でも、その数秒は、永遠のように長かった。


その言葉と、彼が足踏みを止めたのは同時だろうか。


「りょう、ちゃん?」


あの時より、髪の毛は伸びて
声も低くなった。
私と同じぐらいだったのに
丁度、私より顔一個分ぐらい高くなった背丈。

知ってるのに 知らない人みたい。


私の恐る恐るでた声は、少し震えていて、

口から微かに白い吐息が漏れていた。


「...ことり、なのか?」

走ってたせいもあってか、
少し息が上がった彼の言葉。

りょうちゃんが発した言葉は、私の中で大きく鳴り響いた。


止まっていた時が、動き始めた。


そんな感覚に襲われた。



なんて言うのはおかしな話だろうか。
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