強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 次の日のデート当日は、快晴だった。
 若い人向けではなく、落ち着いた雰囲気の街を歩く。休日とあって、人々はゆっくりと歩いていた。
 塚本は、千春を楽しませようと、いろんな店を案内してくれたり、自分の服を選んで欲しいと言ったりとしていた。塚本本人も楽しんでくれているようで、千春も安心してしまう。


 「世良さんに選んでもらった服、なかなか自分では選ばないものだから、新鮮だったよ。」
 「そうですか?………気に入って貰えたらいいんですけど。」
 「気に入ったよ!明日から着たいぐらい!」


 そう言って、服が入っている袋を見つめ微笑む塚本を見ていると、こちらも笑顔になる。おもちゃを買ってもらった子どものように喜んでいるのだから、選んだかいがあったと思う。


 「あ、昼食も店を予約してあるんだ。そこでいいかな?」
 「はい。いろいろ準備してもらって、すみません……。」
 「いいんだよ。俺が誘ったんだし。」


 そう言って、「こっちだよ。」と塚本が千春の手首を掴んだ。そして、引っ張るように歩き始めた。
 千春は温かい熱を感じる腕をじっと見つめながら歩く。人肌を感じるのは、久しぶりで少し不思議な気持ちになる。
 その視線を感じたのか、塚本は振り返ってから慌てて千春の顔を除き込んだ。


 「ご、ごめん!つい手をつかんじゃって………。嫌だった……?」
 「……いえ。そんなことはない、です。」
 「じゃあ、このまま歩いてもいい?」
 「はい。」


 千春が、そう返事をすると顔を赤くしながら微笑んで「じゃあ、手繋ごうか。」と、手を繋いでくれた。先ほどより熱くなった手のひら。そして、真っ赤になった塚本。女の自分よりも照れている彼を見ていると、いつもの逆だなと思ってしまう。
 誰かと付き合うときは、いつも千春がドキドキしていて、顔を赤くしていた。けれど、今は男である塚本が恥ずかしそうにしている。そんな姿がとても新鮮だった。



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