強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました


 「まさか、秋文に告白されるなんて、思ってもいなくて……。すごく驚いちゃって。イヤとかじゃなくて、友達だったから、そんな風に見てなかったし……高校の時から好きだって……わからなかったよ。」
 「千春。……本当に気づいてなかったんだね。」
 

 少し呆れた顔で千春を見ながら、立夏はお酒を飲みながらそう言った。


 2人の時は、お気に入りの焼き鳥屋さんに行くのが、千春と立夏の最近の流行りだった。そのため、今日も同じ店で、夕食を食べながら話していた。
 千春は話したことがたくさんあるため、今日はあまり飲まないようにしようと、ちびちびとチューハイを口にしていた。


 「え?」
 「秋文が千春の事、好きだったのは私も出も知ってるし、同じクラスやサッカー部の部員もみんなわかってたと思うわよ。」
 「えぇ!?そう、なの?」
 「気づいてたけど、秋文は好きなタイプじゃないから見てなかったのかと思ってた……。」
 「そんな事しないよ!」
 「うそうそ。千春はそんな器用なこと、できないもんね。」


 立夏は、笑いながらそう言うと、今度は焼き鳥の串を摘まんで、美味しそうに焼き鳥を口に入れた。


 「さっき、イヤじゃないって言ってたし、1回付き合ってみてもいいと思うけど。」
 「………本当に、自分の気持ちがわからないの。ずっと大切な友達だと思っていたから。男の人として好きなのか、自分の気持ちが整理できないの……。」

 
 大切な友達だからこそ、うやむやな気持ちで返事をしたくない。千春はそう思っていた。
 彼は高校の時から、こんな自分を好きでいてくれたのだ。秋文の気持ちにしっかりと答えたい、それが付き合う事になっても、断る事になっても。


 「私は、秋文と付き合うのはいいと思ってる。幼馴染みとして自慢できる男よ。口は悪くて、少し強気で俺様な所もあるけど、冷静で努力家だし、サッカーも実力があるし。何より一途だしね。」


 千晴と立夏達3人は高校からの友達だったけれど、立夏と秋文と出は幼稚園の頃からの本当の幼馴染みだった。だから、立夏は秋文の良さを千春より多く知っているのだろう。

 それで、そこまで褒めているのだ。立夏の性格からして、彼はとても素敵で立派な男性なのだと千晴も理解していた。


 「………わかってる。秋文が立派なのは。だから、何で私なんかを選んだんだのか、わからないの。」
 「それは秋文にしかわからないわ。」
 「うん…………。それにね………私、先輩にフラれたの結構ショックみたいなんだ。自分でもビックリするぐらい。」
 「……千春。」

 千春は、ほとんど空になったチューハイが入っていたコップをくるくると回しながら、呟くように立夏に本音を伝えた。カラカラと氷がぶつかる音が、小さく響いた。


 「だから、ね。好きだって言われたから付き合う、とか。なんか、先輩を忘れるために秋文と付き合うみたいで……利用してるみたいだなって思っちゃうの。そう思うと、秋文とは付き合えないなって。」
 「そっか……でも、ゆっくり考えてみて返事してあげて。」
 「うん。」
 「それとね……。」


 立夏は、少しだけ悲しむような、説得するような表情で一度躊躇った後に優しい口調で千春に話し始めた。


 「素の自分を見てくれて、「好き。」って言ってくれる人って、なかなかいないと思うよ。」


 その立夏の表情と言葉が、千春には妙に心に残っていた。



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