強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました


 けれど、憧れの海外チームのオファーだ。
 夢のようだったし、日本代表に戻れるかもしれないと思うと、正直心が揺れた。
 
 だが、自分は何のために起業までしたのか。
 彼女を幸せにするためなのだ。幸せに暮らしてほしいと秋文は願っていた。

 
 だから、千春と一緒にいると決めた。
 スペインのオファーも断った。

 けれど、まだ期間はあるからゆっくり考えてほしいと言われているが、答えはもう決まったようなものだった。


 
 「秋文ー、お水貰ってもいい?」

 
 いつの間にか風呂から上がっていたのか、千春かわ話をかけてくる。ロングのシャツワンピのパジャマを着て、濡れた髪は後ろでまとめていた。
 冷蔵庫から新しいペットボトルの水を渡すと、「ありがとう。」と言い水をゴクゴクと飲み始めた。

 「あぁ、さっき話した千春にあげるもの。……手、出して。」
 「うん。」


 千春は両手を皿のようにして差し出す。秋文はズボンのポケットからある物を取り出して、彼女の手の上に乗せた。


 「………鍵?もしかして……。」
 「俺の部屋の鍵だ。俺がいないときでも来ていいから。」


 千春はどんな顔をするだろう。秋文は緊張しながら鍵を彼女に渡した。
 驚いた顔をするのか。それとも、恥ずかしそうに照れるのか。よろこんで笑ってくれるのか。
 秋文は、そんな想像をしていた。


 けれども、それら全て違っていた。


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