今夜、色のない君と。



秋野さんは何事も無かったかのように本の整理を再開した。



絶対何かある。あの絵には。



そう思う反面、本当は僕の勘違いなんじゃないかと少し疑っていたりもする。



本の整理や掃除に夢中な秋野さんの邪魔をしてはいけないと思い、


僕は少し経ってから秋野さんに挨拶をして本屋を出た。



その時チラッと目を向けた、絵の中の女のコの瞳が、少し動いたような気がしたけれど、


そのときの僕は深くは考えなかった。



いくらその絵から不思議さを感じるからといって、




───絵の中の女のコが、動くわけないのだから。



< 35 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop