好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
笑顔をなくしたあいつ
期末テストを終えた夜、俺は東京行きの夜行バスに乗り込んだ。

握手券はリュックの奥底にしまい込んだ。

これが、あいつと直接話す唯一のチャンスだ。

俺はその紙を大切に持ち歩いていた。



高速道路を走るバスの車窓から、流れていく風景を見ていた。

田んぼと畑しかないような田舎では、楽しめるほどの夜景は見えない。

街灯すらほとんどないような真っ暗な道路を、時折通り過ぎる車のライトが照らしている。

俺は夜行バスに乗って、初めて握手会に行った日を思い出していた。
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