好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
剥がしのスタッフが俺の両肩をつかんで、出口へ押した。

俺はほのかが見えなくなるまで、まっすぐあいつに視線を向けていた。



「待って、蒼……!」

ブースの中から、ほのかの声が聞こえた気がした。

俺はブースに戻ることもできず、スタッフの誘導に従って荷物を受け取り、人の流れにそって歩き出した。



「蒼!」

あいつの声に振り返る。

あいつはブースの外へ飛び出し、俺を追いかけていた。

衣装を着たままのほのかが、俺の前で立ち止まる。



周囲を歩いていたファンが、ほのかに気づいて足を止める。

俺たちの周りには、人だかりができていた。
< 139 / 210 >

この作品をシェア

pagetop