好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
俺の頭でも入れそうな私立大学のパンフレットを開く。

テーブルに置き忘れた食器を取りに来た母親が、そのパンフレットをのぞきこんだ。



「蒼、その大学行きたいの?」

「ちゃんと勉強しないと、入れるかわかんねぇけど……」

「うちの経済力じゃ私立は無理よ……東京は家賃も高いし。地元の大学にしたら?」

母親はそう言うと、食器を持って行ってしまった。



……ってことは、東京に行きたいなら国公立にしろってことか。

田舎の高校を卒業して地元の企業に就職した母親は、東京の国公立大学の偏差値を知ってそう言っているのか。

俺はその私立大学のパンフレットは閉じて、自分の偏差値では厳しいと思われる国公立大学のパンフレットを開いた。



『続いて、snow mistの皆さんです』

女性アナウンサーの声に、俺はテレビに視線を向けた。
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