好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
オーディション
オーディションに応募したことすら忘れてしまった頃、急に彼女から呼び出された。

いつもならアポなしでインターホンを鳴らすあいつが、わざわざ俺を呼び出すとか一体何の用事だろう……

俺は少し緊張しながら、子どもの頃一緒に遊んだ公園に向かった。



「久しぶりだね。ここに来るの……」

鉄棒に寄りかかって俺を待っていた彼女が顔を上げる。

いつものジーパンにダボっとしたTシャツを着ていたあいつとは印象が違う。

少し肩を出したTシャツにミニスカートをはいた彼女に、なぜかドキドキしてしまう。



「……おう」

『待たせて悪かった』とか『今日可愛いじゃん』とか気のきいたセリフが思い浮かばず、ぶっきらぼうにうなずく俺。

彼女とは視線を合わせず、俺も鉄棒に寄りかかった。
< 19 / 210 >

この作品をシェア

pagetop