好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「ごめん」

ほのかは小さくつぶやいて、彼女の左手を引っこめようとした。

俺は彼女の手を無理矢理つかみ、二人の間の肘かけに乗せた。



ほのかは明らかに動揺していたが、俺はその手を強く握って離さなかった。

何事もなかったかのように彼女と固く手をつないだままスクリーンに視線を戻す。



ほのかをあんな奴に渡すものか。

あれは演技だと理解しながら、俺はほのかのファーストキスを奪ったイケメン俳優が許せなかった。

長すぎるキスからようやく解放されたほのかは、イケメン俳優の腕の中でうっとりとしたようなぼんやりとした瞳で彼を見上げていた。
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