エリート副操縦士と愛され独占契約
「別に、すごかないよ」


謙遜して照れ隠しをする彼が、薄い男らしい唇をわずかにへの字に結ぶ様は、同い年だから可愛いと思える。
超エリート街道を突き進む、イケメン副操縦士の姿とのギャップを感じて、私はふふっと声を漏らして笑った。


「水無瀬君、行かなくていいの? デブリーフィング、あるんじゃない?」


デブリーフィングというのは、一日の終わりに乗務員たちが行うミーティングのこと。
機長は先に行ってしまったし、水無瀬君も「すぐ追いかけます」と言っていた。


そう訊ねた私に、彼はこくんと頷いた。
そして、黒いフライトバッグを軽く持ち直し、左手首に嵌めたオメガのクロノの時計に視線を落とす。


「えっと……望月、これからなにか予定あるの?」

「え? いや、別に」


彼の質問に、私はきょとんとしながら首を傾げた。


「俺も、あと三十分もしたら上がれるんだ。明日はスタンバイだけど夕方からだし、たまには仕事帰りに、一緒に食事でもどう?」

「え」

「あ。少しなら、酒も付き合えるよ」
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