打って、守って、恋して。

異変が起きたのは八回のことだった。

試合は1対2でやまぎんが負けており、ツーアウト二塁という場面で旭くんに回ってきた。

栗原さんも力投を続けていて、六回に高めインコースに投げたストレートを相手チームの四番にスタンドへ運ばれてツーランを浴びてしまった。それ以外はしっかりとおさえていた。

やまぎんは総じて打ちあぐねていて、毎回ランナーは出すものの要所で打ち取られるという展開を繰り返していた。


「チャンスだから、ここでホームラン打って〜!頑張れ藤澤くん!」

手を組んで祈るポーズをとる沙夜さんの隣で、私も息を詰めながら見守る。男性二人はダラダラとお菓子をつまみながら観戦していた。
「ホームランは難しいだろー!」と言うので、アジア競技大会を思い出してくださいと反論する。


旭くんはいつものように左腕をぐるぐる回しながら打席に入る。
せめてここで繋いでくれたら、一打同点の場面だ。
今後の展開に大きく関わってくる。

応援する側の緊張感も凄まじいものがあるが、本人が受けるものに比べたら大したことはないだろう。

一度じっくり深呼吸して、打席に立った旭くんを見つめること数秒。
ピッチャーが一球目を投げた。


その一球目が、思わぬところへいった。

旭くんの左のふくらはぎあたりにボールが直撃したのだ。
足元へボールが来たことで避けようとするアクションはとったものの間に合わず、その場に倒れ込むのが見えた。

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