打って、守って、恋して。

「絶対これ嘘だよね?」

ピタッとパソコンで流していた動画を一時停止して、身体の向きを変える。

私の視線の先には旭くんがいた。
ここは私の家なのでもちろんプライベートであり、彼はユニフォームなど着ていない。厚手のカジュアルなパーカーを着ている。

ベッドに腰かけて携帯を眺めていたらしい彼は、ちらりと私を見るとすぐに視線をそらした。

「……もうそれ見るのやめない?」

「やめないよ。旭くんのフレッシュな入団会見」

「フレッシュ……ではない」


彼はそう言うが、プロのユニフォームはすごく似合っていた。
年齢が年齢なだけに、というわけではないのだが、とてもしっくりくる。まるで、数年前からそこでプレーしているみたいに。
やまぎんの青いユニフォームも似合っていたけれど、こちらもまた違ってなかなか素敵だ。


「もっと面白い答え方しないとだめだよ。この四巡目の……前田選手?すっごいユーモアたっぷり!こんな感じにしなきゃ!」

「芸能人じゃあるまいし……入団会見で爪痕残してどうするの」

私のダメ出しになんて、彼は絶対に左右されない。

でもあまりにも無難な答えばかり並べるから、なんだかつまらなかったのだ。彼らしいといえばそれまでだけど。


「体力面で自信がないので」のくだりは、絶対嘘なのだ。
彼は間違いなく体力には自信がある。
なんせ、基本的に毎日相当な距離をランニングしているというのだから。

野球はサッカーやラグビーと違って走り続けるような競技ではないから、持続力なんて必要ないと思っていた。でもそれは違うらしい。
どのスポーツも、体力は絶対に必要。
走り込みは基礎中の基礎だと高校時代の監督に言われたことを、旭くんはいまだに忠実に守っている。

毎日ウンキロも走って、疲れないのだろうか。
私なら数百メートルでギブする自信がある。


「背番号、前のままってわけにはいかないんだね」

やまぎんでつけていた“6”の背番号が、なにげに好きだったのに。
会見の動画を再び流しながらつぶやくと、これでいいんだよと彼は微笑んだ。

「57、俺は気に入ってるよ。もうすでに愛着わいてるもん」

「6は?愛着は?」

「ないと言えば嘘になるけど。57も愛してよ」

「愛するよ!じゃあさ、もしも一年目で大活躍して、背番号変えませんかって言われたらどうする?」

「……一桁だったら考える」






このあと本当に活躍して背番号“7”を打診されるのは、まだ先の話。一年後。


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