打って、守って、恋して。

やがて番組では栗原さんと旭くんにスポットを当てて彼らの紹介VTRが流れた。

なんだかとてもかっこいい場面を切り取り、かっこいい表情を映し出され、うまく編集されていた。見慣れているはずの彼がさらに素敵に見えてしまう不思議。

「やだなあ!こんなにかっこよく編集しなくてもいいのにね。ファンが増えちゃう」

「どこが!?」

旭くんはものすごーーーく嫌そうな顔で否定した。

「こういう番組ってたいてい好プレーって映すのはダイビングキャッチとか背走キャッチだよ」

「えー、いいと思うよ。華がある!」

「守備位置読み違えた末の苦肉の策だよ……」


そんなに卑屈にならないで、素直に受け取ってほしいけれど。
でも彼の守備への譲れないこだわりがそこにはあって、むしろ恥ずかしいからあまり何度もリプレイしないでほしいのだろう。

もったいないなぁとつぶやいていると、するりと私の手からリモコンが抜き取られる。


「あ!ちょっと!まだ終わってないよ」

「もういい。このあとMCの芸人に俺、めちゃくちゃいじられるの。見るの耐えられない」

「そんな美味しいところあるの!?」

思わず身を乗り出そうとしたら、ふっと彼の顔が近づいてきて、ちゅっと軽くキスされた。
びっくりして目を瞬かせていると、

「テレビより、こっちのがいいでしょ」

と私を見つめたままノールックでリモコンを操作しテレビを消した。


「……ごめん。じつは録画してあるの」

申し訳ない気持ちで両手を合わせると、旭くんは一瞬動きを止めたが、まあいいやと私の頭をぐいと引き寄せた。

「そんな奥さんには、罰として今日は手加減しないよ」

「て、て、手加減!?今までしてたの!?」

「……さあ。体験してみればいいんじゃない?」




未知の新婚生活は、始まったばかりです。











全編完結となります。

ここまで読んでくださった方、
お付き合いくださいましてありがとうございました!

< 242 / 243 >

この作品をシェア

pagetop