打って、守って、恋して。


翌日の準決勝は、昨日のように終盤まで試合がもつれ込むような展開にはならなかった。
前評判で強豪との呼び声が高い関西にある野球チームが相手だったので、あちらの打線がいつ爆発するかとヒヤヒヤしていたのだ。

しかし、想定していた展開の真逆になった。


山館銀行の打線が爆発したのだ。


打球音が次から次へ聞こえ、相手チームのピッチャーが何度交代してもやまぎんの攻撃が終わらない。
初回の時点で三点を入れた後、コンスタントに点数を入れ続け、七回の時点で十点以上の差が開いてしまった。

ざわつくドーム内に、主審のアナウンスが響く。

『13対2で、山館銀行の勝利。コールドゲームとなり試合終了です』


ぽかんと口を開けたままの私は、いそいそとメガホンをしまう凛子に問いかける。

「えっ?なに今の?え?試合終了?なんで?」

いまだ理解できていない私のそばにいた若い女の子四人組が「準決勝でコールドゲームとかびっくり〜」と話している。

「あー、そっか。柑奈コールドゲーム初めて?」

「ルールブックに載ってる?」

「載ってるけど……まだ持ち歩いてるの!?」

< 56 / 243 >

この作品をシェア

pagetop