大江戸シンデレラ
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おなごたちの手早い働きによって、美鶴はすっかり「花嫁御寮」となった。

最後に、真っ白な錦織の袋に入れた懐剣を帯に差した。
そして、真っ白な組紐を整え、その先の二本の房を真っ直ぐに垂らす。


頃合いとばかりに、この屋敷に案内(あない)されたときにいたおなご(・・・)が、また現れた。
美鶴の手を取り、座敷の外へと促す。

まるで美鶴の心のようにずしりと重い真っ黒な裲襠(うちかけ)の裾を引き、武家屋敷によくある回廊になった縁側に出る。

すると、其処(そこ)にはやはり、島村の家とは別格の庭が広がっていた。

吉原の久喜萬字屋にも、江戸でも指折りの植木職人たちが腕を振るい丹精込めて造りあげた、それはそれは見事な庭園があったが、これほどまで年季の入った立派な樹木が植わっていたわけではない。
(あちら)の木々が、まるで芝居の張りぼてに見えるほどだ。


美鶴は空を見上げた。

どんよりとした分厚い雲がかかっていて、今にも雨が降り出しそうなほど薄暗かった。

陰鬱な心持ちが、ますます募る。
ため息がせり上がってきそうなのを、必死で堪える。


当主である島村 勘解由は、美鶴の出自を知っているようであるし、その妻である多喜は知らずとしても云わずもがなだ。

体面をなにより重んじる武家が、(くるわ)で育ったおなごをすんなりと受け入れられるとは、天地がひっくり返っても思えなかった。

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