大江戸シンデレラ

真っ白な綿帽子に檳榔子黒(びんろうじぐろ)裲襠(うちかけ)を羽織り、真っ白な錦織の懐剣袋を帯に差した姿の美鶴が、手を引かれて祝言の執り行われる座敷に入る。

上座にあたる大広間の奥の、向かって左側に花婿が、そして右側に花嫁の美鶴が並んだ。

さらに、その両側を挟むようにして花婿の横と花嫁の横に、仲人役の武士であろうか、それぞれが腰を下ろす。


おもむろに、花婿が一同に対して平伏する。
花嫁の美鶴もそれに(なら)う。

すぐ隣にいるのに、お互い正面を向いているし、緊張のためか俯きがちになっているしで、隣にいる上條 広次郎の表情はわからない。


花婿が頭を上げた。やや遅れて、花嫁の美鶴も頭を上げる。

座敷の左側には広次郎の父親と(おぼ)しき壮年の武士が、そして右側には弟にあたる島村 勘解由(かげゆ)が座していた。

ほかの者はだれもいなかった。

また、やはり公方(くぼう)様の忌引(きびき)のためなのか、目の前には酒どころか膳の一つも並べられていなかった。

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