大江戸シンデレラ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜


島村 勘解由は上座に居並ぶ、花婿と花嫁に目を向けた。

おもむろに、花婿が平伏する。
少し遅れて、花嫁も(たお)やかに頭を下げる。

勘解由は、花嫁御寮の美鶴に目を移した。

俯きがちなうえに真っ白な綿帽子の所為(せい)で、その下で如何(いか)なる表情をしているのかは、皆目わからない。

また、公方(くぼう)様が愛息を亡くされた忌引(きびき)最中(さなか)であるがゆえに、晴れがましき慶事にもかかわらず、花嫁はまるで漆黒の闇夜のごとき裲襠(うちかけ)(まと)い、さらに酒はおろか膳の一つも出ていない。

そもそも、この祝言そのものが、奉行所の者たちにほとんど知られることなく密やかに行われていた。


花婿・花嫁が、三献の儀である三三九度の(さかずき)を交わした。

これで、晴れて二人は夫婦(めおと)となった。

本来ならば、このあと今日の()き日を寿(ことほ)ぐための高砂(たかさご)(うたい)が続くものである。

だが、それもない。

さすれども、祝言は滞りなく粛々と進められていく。

< 233 / 460 >

この作品をシェア

pagetop