大江戸シンデレラ

「されども……(せわ)しない見世の者に、毎日供に付いてもらうのは……」

生まれてこの方、かように御堂にお参りすること以外には陽の当たらぬ暮らしをしてきた舞ひつるにとって、たとえ束の間であろうと、一人きりになって人心地のつく(とき)であったのだが……

——また、あないな思いをするのは……

舞ひつるは、しょんぼりと俯いた。

燈籠鬢(とうろうびん)の島田(まげ)に結われた(うなじ)から覗く肌は、文字どおり透けるがごとく真っ白だ。

見世の中には町家どころか武家でも滅多とない風呂があるため、わざわざ湯屋(ゆうや)へ通うこともなく、また歌舞音曲のお師匠(っしょ)さんたちだって通いで稽古をつけに町家から吉原に通ってくるから、その賜物である。

もちろん、湯屋や稽古を口実にして遊女たちに「足抜け」されてはたまったものではないから、というのが見世の算段なのだが。


すると、父親譲りの面立(おもだ)ちで兵馬は、にやり、と不敵に笑った。

「……いいことを思いついたぜ」

舞ひつるは何であろう、と兵馬を見た。

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