大江戸シンデレラ
「さようなことが……あの頃のそなたの身に起きてごさったか……」
兵馬はしみじみと云った。
そして、あの夜我が身がなにゆえ一晩中待ちぼうけを喰らわされたかの顛末でもあった。
「そう云えば……」
兵馬は肝心要を失念していたことに、今さらながら気づいた。
「そもそも、そなたとの縁組は御前様から来た話であったな」
同じ組屋敷界隈で手を打つことが多い縁組の中で、やはり兵馬と美鶴は異例過ぎた。
「うちの父は、そなたの身請けの件も御前様がなにゆえ我らの縁組に関わったのかも、存じてござろうか……」
「……祝言の翌日、わたくしが御舅上様にお会いして聞き及んだことがござりまする」
なぜか、美鶴の物云いが「武家の妻女」のものに変わり、顔つきも堅くなった。