大江戸シンデレラ
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


その日の昼はめずらしく、舞ひつるにはいずれのお師匠の稽古もなかった。

なので、早速妹女郎の禿(かむろ)たちの隣に座って稽古に加わろうとすると、

「舞ひつるは、今日は()しなんし」

姉女郎の羽衣から、ぴしゃりと制された。

「近頃、なにかに取り憑かれなんしたかのごとく(こん)を詰めて精進しなんしゆえ」

「舞ひつる(ねえ)さん、心なしか顔色が悪うなんし」

禿の一人、羽おりが気遣わしげに云った。

「わっちも、さように思うていなんした」

もう一人の禿、羽おとも肯く。


「お稽古ちゅう、お邪魔しなんして申し訳のうありんす」

番頭新造のおしげ(・・・)が座敷に入ってきた。

「お内儀(かみ)さんが、舞ひつるをお呼びでなんし」

「何のご用でなんしかえ」

かような時間に内所に呼び出されるのは滅多とないゆえ、羽衣が尋ねる。

「さぁ、わっちには、なんとも……」

どうやら、おしげには用件を知らせていないらしい。

舞ひつるは(いぶか)しみながらも、内所へ行くために腰を上げた。

< 91 / 460 >

この作品をシェア

pagetop