停留所で一休み
第18話 前向き
東京に戻ると決めた翌朝。

庭の花に水をやっていると、本村君の姿が見えた。

「本村く……」

自分から話しかけようなんて、初めてかもしれないって言うのに、あいつは全く気付かずにうちの玄関へ。

「まっ……いいか。」

聞こえなかったのかもねと、また庭の花に水をやり始める。


すると、中から母の声がした。

「あら、本村さん。出海を探しているの?」

ドキッとした。

あいつが、私を探しているって……

何で?

「出海はね。庭の花に、水でもやってるんじゃないかしら。」

そう言って母は、庭に面している廊下の、大きな窓を開けた。

「出海。本村さん、来てるわよ。」

「えっ?」

今気づいた振りをして、振り返る。
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