停留所で一休み
「小形係長?もしかして今の話聞いて……」

真帆ちゃんの声も。


「真帆、ここで待ってて。」

佳樹のそんな言葉が聞こえてきて、こっちへ来る音がする。

会いたくない。

私は急いで、残りの小物を拾うとした。

最後の一つ、口紅を拾おうと手を伸ばすと、別な手がそれを拾いあげた。


「大丈夫か?出海。」

一ヶ月ぶりに聞く佳樹の声。

だけど私は、返事をすることなく、佳樹に拾ってもらった口紅を奪い取る。

「ごめん、黙ってるつもりはなかったんだ。ちゃんと、会って話そうと思ってたんだけど。」


ここ数日の、佳樹からの着信。

”会って話したいことがある”という留守電。

無視していたのは、私の方だ。
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