停留所で一休み
「うん、分かってるよ。」

涙を目に貯めながら、佳樹を見つめた。

「分かってる。仕事に一生懸命なのも、そうなると周りが見えなくなる事も……」

いつも私が、注意されるところ。

佳樹も知っている。

「だけど1年前の出海なら、暇を見つけて会いに来てくれたし、寝る前には必ず電話もくれたよ。今、そうしないのは、俺に気持ちがなくなったからじゃないか?」

知っているからこそ、言える言葉がある。


「私……佳樹の事、大事にしてなかった?」


気持ちがなくなったなんて、ウソ。

今も、佳樹と別れたくなくて、醜いくらいに繋ぎとめようとしている。

「大事には、してくれたよ。出海は、俺に優しかった。」
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