それは誰かの願いごと
わたしが出会ってきた男性達が束になっても敵わないほどの壮絶な艶をまとって、まるで甘えるようにわたしに問いかけてきたのだ。
郁弥さんはわたしが頷くまでの間にも、額とか、耳たぶとか、こめかみ、目じり、頤にキスを施していく。
わたしは返事をしたいのに、小さなキス達にいちいち反応してしまって、ちゃんと郁弥さんにイエスを伝えられなくて。
けれど案ずることはなかった。
郁弥さんはキスを続けながら、わたしをゆっくり抱き上げたのだから。
いわゆるお姫様抱っこという体勢で、不安定になったわたしはとっさに郁弥さんの首に両手を回してしまった。
「好きだ……」
今度は唇に、郁弥さんのキスが訪れる。
わたしも好きです……
そう告げたいのに、郁弥さんの舌に塞がれていて言葉にできない。
だけどその深いキスを素直に受け入れたとき、郁弥さんにはわたしの返事がすべて伝わったような気がした。
口数が少ないと言われ、クールだと噂されていた郁弥さんが、こんなにも想いを言葉にしてくれること、わたしの悪い癖を忘れさせるくらいに熱く触れてくれることに、目眩がするほどの愛しさと幸せを感じる。
やがて、二人の息継ぎがどちらのものか分からなくなってきた頃に、わたしは郁弥さんのベッドに柔らかに閉じ込められたのだった―――――――――