碧い瞳のシャイ
草原の少女


ジュズダマの花咲く草原で

少女は絵を描いていた

いや…描けずにいた

キャンバスに絵筆を押し当てて

ずっと動けずにいる

その時、白い砂丘の彼方から

シャイがトコトコやって来た

少女は驚いた

「ね、猫が歩いて…来る?」

シャイは絵を覗き込む

「ぼくはシャイ!よろしくね!…ところで、なぜ続きを描かないの?」

「…わかんない」

「そう…自信を無くしたんだね」

少女はまた驚いた

「えっ!…心を読んだの?」

シャイは答える

「心の声を聞いたんだよ」

「そっか…だって、みんな上手過ぎ…才能が無かったんだ…わたしには」


シャイは絵筆を握る少女の手に

そっと前足を重ねた

「人と比べなくてもいいよ…だって君の描く絵は、世界でたった一枚しかない宝物だよ」

「シャイ君…」

シャイは重ねた前足と共に

少女の手を下に降ろす

「描けないのなら、絵筆を置いて休めばいい…また絵筆を握れるその日まで…ね!」

そう言って、シャイはニッコリ微笑んだ

「そう…だね、うん!そうする!!」


少女は画材道具を片付ける

「シャイ君、ありがとね!」

シャイは立ち去ろうとする少女を呼び止めた

「待って…」

少女は振り向く

「心の絵筆は折らないでね…大丈夫、夢は必ず待っててくれるよ」

少女は満面の笑みを浮かべた

「うん!」

去ってゆく少女の後姿を

シャイはいつ迄も見守っていた

右はアクアマリン

左はルビー色に輝く

その美しい碧い瞳で




いつ迄も、いつ迄も…







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