碧い瞳のシャイ
「それは…あの銃声や砲声が聞こえるだろ」
シャイは音の聞こえてくる方へ
シュッとした三角の耳を向けて
ピクピクさせた
「あの音が鳴り響く度に…命が一つずつ消えてゆくんだよ」
「そしてたった今…その手で、幼い命を消してしまったんだね」
兵士はまた驚いた
「君は一体…」
兵士はシャイの顔を見直す
シャイは大粒の涙を流している
「君は…僕のために泣いてくれるのかい」
うずくまって
地面に両肘をつき
自らの顎に銃口を突き付けている兵士の手に
シャイはそっと前足を重ねた
「辛かったよね…苦しいよね」
兵士の目に涙が滲む
「苦しみなよ、その子のために…苦しんで、生き抜いて…その子のことを君が覚えていてあげないと…」
「う…うう…」
シャイに導かれるように
兵士は銃を握る手を地面に落とす
そして泣き崩れた
シャイは兵士が泣きやむまで
兵士の丸めた背中に
ずっと前足を添えていた
やがて兵士は静寂を取り戻す
「ありがとう…少しだけ楽になったよ」
「うん…それじゃあ、行くね」
シャイが白い砂丘に融けてゆく中
見送る兵士はふと思った
『しまった!…名前を聞くの忘れた』
「シャイ~…ぼくはシャーイ!」
なんにも無い白い砂丘に
シャイの声だけが木霊する
兵士は静かな笑みを浮かべてながら
思い出していた
宝石色に輝く
シャイの碧く澄んだ瞳を…