ハイスペックなイケメン部長はオタク女子に夢中(完)
36.二人でお絵かき
あやめは、

「雅也さんも一緒に描きませんか?」というと、北見は驚いた顔をして

「オレは良いよ。」と言った。あやめが

「えー、せっかくだから一緒に蝶描きましょうよー。」と言うと、北見は渋々筆を取った。あやめは北見の隣に移動して、同じスケッチブックを覗き込むようにすると、

「一緒に描くって何を描くの?」と北見は言った。あやめは

「この蝶。もっと色んな色の蝶描きません?」と言うと、

「こんなのオレには描けないよ。」と北見は言った。あやめは、

「大丈夫ですよ。」と言って北見の持っている筆に自分の手を重ねて、蝶を描き始めた。

「こんな感じで描いていけば、いつの間にか蝶っぽい形になるでしょ?」と北見を覗き込むと、何故か少し頬が赤い。

「雅也さん?」と声をかけると、

「あぁ、ごめん。ちょっとびっくりして。一緒に描くってこういうことだと思ってなかったから。」と北見が言った。あやめは確かに近すぎる距離に今更気づいて少し恥ずかしくなり、

「あ、すみません。ちょっと近すぎましたね。」と、筆を渡して離れようとすると、北見は

「いや、ちょっと驚いただけ。次はこの緑とオレンジで描いてみよう。」と言って、パレットに絵の具を出すと、筆を洗い、あやめを振り返った。あやめはもう一度筆を持っている手に重ねて、絵の具をつけると、筆を一緒に動かし、もう一匹蝶を描いた。北見が自分で筆を動かし始めたのを見て、あやめは別の紙に絵の具を乗せて蝶を描き、水分を多めにした垂れた絵の具にフーと吹くとぶわーと線が広がった。模様になって面白いかも、と思い、キッチンからストローを持ってきて、幾つか絵の具の水滴を垂らして吹き付けて模様をつけた。確か、中学生の頃にこれで絵を描いたなーと思い出しながら、様々な色の水を落として息を強く吹いたり弱く息をかけて紙を斜めにしたりしながら遊んでいると、別の蝶を描き終わった北見が

「それも蝶?」と聞いた。あやめは目の前の紙を見て、

「んー、羽の模様になるかな?って思ったんですけど、蝶って言うより蜘蛛の巣みたいになっちゃいましたね。」と笑った。北見はフっと笑って、

「確かに水彩画はこうやって色々出来て面白いね。」と言いながら持っている筆をくるりと回した。回転した筆から絵の具が飛んで、紙やテーブル、着ていた服にまで散った。

「あーあ。」と言ったあやめに、北見は気まずそうな顔をした。あやめは思わずプッと笑って、

「まぁ、水性絵の具だから洗えばすぐに落ちますよ。っていうか、回した時の水滴の散り方ってこんな感じなんですね。」と言いながら、自分の持っている筆も回してみた。北見のようにキャッチはできなかったが、クルッと回って水滴をちらし、落ちた筆を拾って、違う色をまた重ねて円形の水滴を3色で描いた。

「何かちょっと花火っぽくないですか?」と隣の北見を見上げると、唖然とした顔で見ていた。あやめはテーブルや自分のシャツに少し飛び散った絵の具を見て、

「ちょっとやりすぎました?」と聞くと、北見は

「いや、オレは良いけど、あやめのシャツにも付いちゃってるよ。」と言った。あやめが

「まぁ洗えば落ちるから良いかなと思って。」と答えると、

「でも、早めに落とした方がいいんじゃない?」ともっともなことを言われ、

「そうですね。もうそろそろ終わりにしときます。」と時間を確認して、筆をバケツに入れ、台拭きでテーブルを拭いた。テーブルはあっという間にきれいになり、あやめは洗面所へパレットや筆を洗いに行った。先に洗面所に入っていた北見はちょうど着ていたシャツを脱いでいる所で、

「あ、すみません。」とあやめが謝って洗面所を出ようとすると、

「もういいよ。」と北見はグレーの半袖の肌着一枚の状態で出てきた。思っていたよりも引き締まった身体のラインがはっきりとわかり、良い身体だなー、鍛えてるのかなー?と思ってマジマジと見つめてしまったあやめに、

「そんなに見られるとさすがに恥ずかしいんだけど。」と言った北見の声でやっと我に返ったあやめは

「うわっ。すみません。すごいキレイな身体だなと思って。筋トレとかしてるんですか?」と赤面しながらあやめが聞くと、

「まぁ気が向いた時だけだけど、一応ね。」と言った。羨ましいなーと思いながらまた見ていると、

「あやめのシャツにも絵の具飛んでるから、一緒に洗っとく?」と北見が言った。パレットと筆を洗面台に置いて、鏡に写った自分のシャツを見て、確かに早めに落としたほうが良いかもしれないと思い、

「確かに、早めに洗ったほうが良さそうですね。一緒に洗っても良いですか?」と北見を見あげると、

「もちろん。」と言った。パレットと筆の絵の具を水で流しながら、この服も、一度水で落としてからの方が良いかな?と思い、北見のシャツを先に水洗いし、自分のシャツも脱いで水洗いをして、洗濯機を回した。ふと鏡に映った自分の姿を見て、

「うわっ!」と声を上げてしまった。しまった。ここ自分の家じゃないのに、何て格好をしているんだ。お気に入りの肌触りの良いピンクのキャミソールは胸元に切り替えがある分、胸の大きさが強調されていて、黒のレースのブラジャーは直接は見えていないものの、肩紐からその存在感を主張している。部長の家の洗面所でこんな格好で一体何をしているんだ…と思っても、脱いだシャツは既に洗濯機の中でずぶ濡れ状態。

「どうかした?」と北見の声が聞こえたと思うと、半分開いた状態だったドアが遠慮なく開き、あっと声を出す前に北見が入ってきた。鏡越しに目があって驚いた表情の北見を見て、真っ赤になった自分の顔に鏡から目を逸らすと、

「ごめん。オレが早めに洗ったらなんて気軽に言っちゃったから。」と北見が謝った。あやめは

「雅也さんのせいじゃないです。自分の家の感覚で私が考えもなく脱いで洗っちゃったんで。こんなお見苦しい格好ですみません。」とあやめは頭を下げた。北見は

「見苦しいなんてことはないよ。あやめによく似合ってる。ちょっとセクシー過ぎてオレの理性がぶっ飛びそうだけど。」と言った。あやめが顔を上げると、

「そんな顔で見られたらもう限界。」と言って、北見はあやめの手を取って引き寄せ、腰を抱いてキスをした。抵抗する間もなく奪われた唇に、あやめは驚き目を閉じる間もなかった。驚きながらも嫌な感情がちっともせず、むしろもっとこの人が欲しいと感じている自分に戸惑いながら、目を閉じると、唇を離した北見は、

「ごめん。嫌だったら全力で抵抗して。今ならまだ止められる。」とあやめを抱きしめて耳元で囁いた。あやめは北見の背中に手を添わせ、目の前にある北見の首元に唇を這わせ、

「止めるなんて言わないで。」と上目使いで北見を見た。一瞬息を呑んだ北見は、ニヤッと笑ってあやめの頭を左手で支えると、噛み付くように唇を落とし、先程のキスとは全く違う遠慮のない動きであやめを攻め立てた。歯列をなぞるように舌が動き、少し開いたあやめの口から舌を絡め取ると、甘い蜜を注ぎ込むように官能的なキスを続けた。すっかり蕩けてしまったあやめの様子に気がつくと、名残惜しそうに口を離し、チュッとリップ音をわざと鳴らして、

「あやめ、見て。」と鏡を見た。蒸気していやらしい顔をしている自分の姿に、目を逸らすと、男の目をした北見がまっすぐあやめを見つめていた。恥ずかしくなって北見の胸に顔をつけると、

「あっち行こう。」と言ってあやめをギュッと抱きしめ、あやめが顔を離すと、膝と首元に腕をやって、ヒョイッとあやめを抱き上げると、足で扉を押し開けて寝室へ向った。突然のお姫様抱っこに驚きすぎて目を見開くと、北見は器用にまぶたにキスを落として歩いた。
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