追憶日和

「おい」


え・・・?


耳元で、誰かが声をあげている。


美江はパッと起き上がった。


一瞬、目の前にある顔が誰か分からなかった。


「何だ、正典か」


と、美江はニコリと微笑んだ。


いつの間にか眠っていたらしく、教室には2人だけになっていた。


山下正典(やました まさのり)は目を丸くして美江を見た。


「お前、寝ぼけてるだろ?」


「え?全然。―――ちょっと変な夢見ちゃったからさ。


私、夢の中でおばあちゃんになってるの。それでね――、あ、ごめん。忘れちゃった」


その言葉に、正典は笑い出した。


「お前さ、本当おもしろいヤツだな」


「そう?―――でも、本当変な夢」


美江は立ち上がって、大きく伸びをした。
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