しあわせ食堂の異世界ご飯3
一口目は、カレーの旨味が口の中いっぱいに広がった。野菜の優しい味に、思わず安心感を覚えるほどだ。
 けれど、すぐに次はやってくる。
 こくんと喉を鳴らして飲み込むと、ローズマリーの舌が辛みを感じた。それは口から体内に入ったカレーを辿っていくように、どんどん全身に広がっていく。
「……はぁっ」
 とっさに新鮮な空気を取り入れて、その瞳を開く。
 思わず何度か瞬きをすると、長い睫毛にわずかな汗が弾かれた。たった一口だけなのに、ローズマリーの額はしっとりと汗ばんでしまったのだ。
「すごいわ……」
 前回の料理も汗をかいてしまったが、一口目から……というわけではなかった。この特製カレーは、あの時の料理以上なのだとローズマリーは理解する。
 まるで未知の体験をしているかのようだ。
「すべて食べたら、わたくしの体は……いったいどうなってしまうのかしら」
 この熱さと美味しさの前に、自我を保っていられるのだろうか――と、考えてしまう。
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