しあわせ食堂の異世界ご飯3
貴族は普通、市場にやってきて買い物なんてしない。それは使用人の役目だし、家に届けさせたりしていることが多いだろう。
「私も確認したわけじゃないけど、裕福な商人とかの娘じゃないかい? 本当に貴族だったら、市場になんて行かないだろうしね」
「商店だったらまだしも、貴族が市場にくることはないな」
 常連は納得できたようで、エマの言葉を肯定した。
 すると、ふたりの話を聞いていたほかの客たちもリズのことを話題に入ってくる。
「貴族じゃなかったのか」
「教養もありそうだから、俺はてっきり……」
「これなら大手を振って話しかけられるな! お菓子とかあげたらもらってくれるかな?」
 リズのことを可愛がってくれるのはもちろん嬉しいけれど、度が過ぎるのは困る。常連たちを見て、エマはため息をひとつ。
「まったく。そんな口を聞いてないでとっとと食べておくれ。まだ外にはお客さんがいるんだから。……それと、もしリズちゃんを泣かせるようなことがあれば容赦しないよ!」
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