剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
「こだわりますね」

「こだわるさ。俺は欲張りなんだ、シリーの全部が欲しいんだよ」

 すかさず返され、セシリアは伏し目がちになりなる。

「私、あなたの理想の家庭を築くのは無理です。結婚したとしても、おとなしく帰りを待つだけなんてできません。妻としてよりも副官としてどこまででも共に行きますよ?」

「いいね。俺の一番の理想は、シリーがずっとそばにいることだから望むところだ」

 セシリアの不安を払拭する穏やかな笑顔だった。反対に、胸が詰まってセシリアは泣き出しそうになる。ルディガーはセシリアの額に軽く口づけた。

「そんなことを気にしてたのか……シリーはあれこれ気を回し過ぎなんだよ」

「ルディガーは色々と無茶し過ぎです」

 さりげなく名前で呼んだセシリアの額にルディガーが自分の額を合わせた。

「そう。だから、ずっとそばにいてもらわないと困るんだ」

 軽快なやり取りに今度こそセシリアは笑った。こんなにも満たされる気持ちになるのはいつ以来なのか。

「で、返事を聞かせてくれる?」

 茶目っ気交じりの問いかけにセシリアは改めて姿勢を正してから、ルディガーを見据えた。

「ずっと、ずっと好きでしたよ。この命もこの体も……心もすべてあなたに捧げます」

 言い終わるのと同時に唇が重ねられる。セシリアは素直に口づけを受け入れた。長い間、そばにいたのに遠かった心がやっと交わる。

 何度も角度を変えて触れ方に緩急をつけながら繰り返されるキスの合間に、ルディガーはふと昔を思い出した。
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