バツイチ彼に告白したら、予想外に溺愛されて困惑しています。
◆エピローグ
小高い丘の上に墓園がある。
メインの通路から枝分かれした一画。
その中のひとつに、紅林家のお墓があった。
お水を取り替えてお花を挿す。
蝋燭と線香に火を点けて、静かに手を合わせた。

真さんのご両親は交通事故で亡くなったそう。
真さんと付き合うことになってから、何となく墓前に手を合わせたい気持ちになって、こうして連れてきてもらったのだ。

静かな墓園に、木々が揺れ葉が擦れる音が風と共にそっと抜けていく。
とても天気のいいこの日、線香の煙は柔らかな風に流されながら空へと吸い込まれていった。

どちらからともなく手を繋いで、丘の下の駐車場まで歩き出す。

「可憐ありがとう。」

「ご両親にご報告できてよかったです。真さんと幸せになりますってお伝えしましたよ。」

「俺も負けていられないな。可憐のご両親に挨拶にいかないと。」

「うちですか?」

別に挨拶なんてまだいいのにと思って真さんを見ると、何だか真剣な表情をしていて戸惑ってしまう。

「可憐さんをくださいって。」

「そ、それはどういう、意味で…?」

「結婚しよう。」

「えっ、えええー!」

突然のプロポーズに、私は驚きのあまり仰け反った。
そんな私の反応に、紅林さんは眉間にシワを寄せる。

「あれ?そこは二つ返事で了承してくれると思ったのに。」

不満げに言う真さんに、真っ赤な顔の私。

「いや、あの、心臓に悪いです。びっくりしたっていうか…。」

必死に取り繕う私に、真さんは表情を緩めた。

「ははっ、そんなところも可憐らしくていいね。」

「私らしい?」

「そういう飾らない真っ直ぐなところだよ。」

ぶわっと、体中を何かが通り抜けていく感覚になった。
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