夜のしめやかな願い
*
珍しく一人で飲みたくなり、なじみのバーに寄ったら兄がいた。
遠巻きに見ている女子たちはいるが、誰一人、声をかけていない。
この空気感だと無理だろう。
悪魔のような冷気を感じる。
1メートル以内に近づいた瞬間に凍りそうだ。
「兄さん、いたんだ」
宗忠はあえてカラリと声をかけた。
ちらりと視線が投げられる。
やっぱり機嫌が悪い。
こういう時の鉄板ネタは決まっている。
「そうそう、さゆさゆ」
軽い調子で話し出すと、宗臣の眉が動いた。
やっぱり興味をひいたらしい。