夜のしめやかな願い

「ありがとうございますう」

さゆりは首だけで頭を下げた。

「でも曲の雰囲気が明るくなって、やっぱりどうでしょうー。
 ってか、私と曲想が真逆じゃないですか。
 組ませるのが間違いなんですよ~」
「いいか。
 戦争の映画のテーマソングだからといって、もの悲しければいいっていうもんじゃない」

啓はびしっと指をさゆりの顔を指した。

「失礼ですって」

さゆりはむんずとその指をつかむと、下におろした。

「一般人が戦争の向こうに願うのはなんだ?
 それを感じさせないで演奏者としてどうする」
「わあ、啓さん、まともなこと言いますねえ」
「おうよ」

さゆりはぼんやりと宙をみつめる。


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