夜のしめやかな願い
*
プーランク。
珍しい曲を弾いていると思って、さゆりは足を止めた。
ドアにくりぬかれている丸い窓からのぞく。
弾いているのはやはり啓だ。
視線に気が付いたのか、手を止めて目を向けた。
とっさに頭を下げようとしたが、ばっちりと目が合ってしまった。
啓はくいくいと指で招く。
さゆりは気が向かなかったが、しぶしぶと部屋の中に入った。
「お邪魔します」
「どうだ?」
「どう?
えーと、啓先生にしては珍しいタイプですね」