あなたを忘れていいですか?

段ボールに囲まれての最後の夜。

大学に入った時から暮らしていた。
今は亡きお父さんと、二人で決めたんだっけ。

医療の道に進みたいと考えたのは、お父さんの影響だった。
お父さんは地元の市立病院の薬剤師だった。

二年前、私が大学三年の夏に交通事故で突然他界した。
残されたお母さんは、弟の大学進学を機に結婚して横浜にいる兄の側へと弟と引っ越した。
三人兄妹の私は、五歳上の兄と三歳下の弟の真ん中。
弟は横浜の大学に通っている。
だから、地元にはもう私の実家はない。
お父さんの実家があるから、親戚はいる。
私達が住んでた一軒家は従兄弟夫婦に売ってしまったから。

この街よりは、東京の方が家族がいる横浜に近いから安心だよね。

「お父さん…私、東京に行くね。」

大学に近く駅にも近く、便利がいいアパートだったな。
最後の夜に、一人ビールを飲みながら思い出に耽った。





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