先生が私に恋をした
もう一杯飲もうとキッチンの前に立った

フワッと温かいぬくもりに包まれる
私を後ろから抱きしめた先生と鏡越しに目が合う
すると次の瞬間

「見て、今の奏さんの顔」

先生の息が私の頭に降ってくる
熱い、、、

「プロポーズされたのに、寂しい顔してる
仕事はきっと言い訳にしかすぎない
好きなら迷わず飛び込むはずだからね
奏さん、他に誰か心の中にいるんじゃない?」

ストレートに核心をつかれて、ドキッと心臓が跳ね上がる
先生は何もかもお見通しなんだ
私が気付かないことも、隠そうとしていることも

「自分を誤魔化してはダメだよ
いつか後悔するから。ちゃんと正直にならないと」
「はい。先生に聞いてもらって良かったです」

いつの間にか離れた身体はどこか物足りなさを感じていた

「で、その誰かは誰なんだろう?」
「えっ?」

戸惑う私に先生は言葉を付け加えた

「俺ならいいのに、、、」

ひとり言のように呟いて空っぽになったカップを流しに
置いた

それって、、、
つまり、その、、、私の心がザワザワと音を立て
何かがバラバラと崩れ落ちていった

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