先生が私に恋をした
私の心にいる人、、、
誰?その人は一体誰なの?
自分の不安定な気持ちに問いただす

わかるはずもないのに、、、


医局を出た私はトボトボとロッカールームへ向かった
誰か教えて欲しい
私の本当の気持ちを、、、


「奏さん」

ロッカールームへ入ろうとドアノブに手を掛けた
私を誰かが呼び止めた

振り返ったら

「近藤先生」
「帰るの?」
「はい、先生は?」
「これから外来。奏さんじゃないのかー」

ガックリと頭を下げておどけてみせる

「そんなこと言わないでください
みんな、頼れる助手ばかりですよ」
「そういうことじゃなくて、、、」

ん?と首を傾げて先生の言葉の続きを待った
サラサラした触り心地の良さそうな前髪をクシャリと
つかんで、小さくため息をこぼした

「奏さん分かってないなー。俺の気持ち」
「え?何がですか?」

ただでさえ何を考えてるか謎多き先生
そのミステリアスなところが魅力のひとつなんだろうけど

「言わない。というか、言えない。俺は既婚者だから
言ってしまえば後戻り出来なくなる」

なんとなく察しがついてしまった
だから私は何も言わず、ただ、、、頷いただけ

先生は、気をつけて、と言うとそのまま行ってしまった


< 86 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop